「毎日同じ作業を繰り返している」「別々のシステムへの二重入力に時間がかかる」「定期レポートを手動で作っている」——こうした「繰り返し業務の自動化」を、プログラマーなしで実現できるのがZapierやMakeといったノーコード自動化ツールです。

従来、業務の自動化にはシステム開発の専門知識と高額な費用が必要でした。しかし、Zapier・Makeのようなツールを使えば、非エンジニアの社員でも「ドラッグ&ドロップ」の操作で複数のサービスを連携させ、作業を自動化することができます。

本記事では、Zapier・Makeの基本概念から、中小企業が実際に導入して効果を出した5つの事例まで解説します。

Zapier・Makeとは何か

「サービス間をつなぐ」ノーコードツール

Zapierは2011年に創業した米国発の自動化ツールで、7,000以上のサービス(Slack・Gmail・Googleスプレッドシート・Salesforce・kintoneなど)を相互に連携させることができます。Makeは以前「Integromat」という名前で知られていたチェコ発のツールで、より複雑な自動化フローの設計に強みを持ちます。

基本的な仕組み

  • トリガー:「〇〇が起きたら(if)」という起動条件(例:フォームに入力があったら)
  • アクション:「△△をする(then)」という実行内容(例:Slackに通知を送る・スプレッドシートに記録する)

例:「フォームに問い合わせが来たら → Slackに通知を送る + スプレッドシートに記録する」という自動化を、コードなしで設定できます。

ZapierとMakeの違い

項目 Zapier Make
対応サービス数 7,000以上 1,000以上
難易度 低(初心者向け) 中(複雑なフロー向け)
無料プラン 100タスク/月 1,000オペレーション/月
有料プランの目安 約3,000円〜/月 約1,000円〜/月
強み 簡単・連携サービスが豊富 複雑なロジックを視覚的に設計

※価格は2026年時点。最新は各公式サイトを参照ください。

中小企業の自動化5事例

事例1:問い合わせフォームの自動分配(社員25名・コンサルティング会社)

自動化前の状況

ウェブサイトのお問い合わせフォームに来た内容を、毎朝担当者がメールで確認し、内容を分類して各担当者に転送していた。1日あたり30〜40分の作業。

自動化後の仕組み(Zapier)

フォームに入力があると自動で:

1. 問い合わせ内容をGoogleスプレッドシートに記録

2. 問い合わせカテゴリ(製品Aについて/採用について/その他)に応じて、対応する担当者のSlackに自動通知

3. 問い合わせ者に「受信しました」という自動返信メールを送信

効果:担当者への振り分け時間がゼロに。問い合わせへの最初の返信が平均4時間→1時間に短縮。

事例2:受注確定→社内通知→請求書作成の自動化(社員15名・EC会社)

自動化前の状況

ECサイトで注文が入るたびに、受注リストへの手入力・倉庫への出荷指示メール・請求書の手作成という3つの作業が発生していた。1件あたり15分、1日50件で約12時間の作業。

自動化後の仕組み(Make)

ECサイトで注文が確定すると自動で:

1. 受注管理スプレッドシートに注文情報が追加される

2. 倉庫のSlackチャンネルに出荷指示が送信される

3. freeeで請求書が自動作成される

効果:受注処理の工数が1件あたり15分→2分に削減。月間220時間の工数削減。スタッフが顧客対応・商品企画に集中できるように。

事例3:採用管理の自動化(社員40名・製造業)

自動化前の状況

応募者がGoogleフォームで応募すると、人事担当者が手動でスプレッドシートに記録し、面接調整のメールを手書きで送っていた。採用繁忙期は1日2〜3時間かかっていた。

自動化後の仕組み(Zapier)

応募フォームに入力があると自動で:

1. 応募者情報がGoogleスプレッドシートの採用管理シートに追加される

2. 採用担当者に「新しい応募が来ました」とSlack通知

3. 応募者に「応募を受け付けました。1週間以内にご連絡します」という自動返信メールが送信される

効果:採用管理の事務作業が1日2時間→30分に削減。応募者への初回連絡の速度も改善し、内定承諾率が向上。

事例4:定期レポートの自動生成(社員20名・広告代理店)

自動化前の状況

毎週月曜日の朝、担当者が各クライアントの広告パフォーマンスデータ(Google広告・Meta広告)をダウンロードし、Excelにまとめてからクライアントにメールで送付していた。10クライアント分で3〜4時間かかっていた。

自動化後の仕組み(Make)

毎週月曜日9時に自動で:

1. Google広告・Meta広告のAPIからデータを取得

2. Googleスプレッドシートのテンプレートにデータを転記

3. 各クライアントにカスタマイズされたレポートをメールで自動送信

効果:週次レポート作成の工数が3〜4時間→15分(最終確認のみ)に削減。スタッフが戦略立案・提案資料作成に集中できる時間が増加。

事例5:在庫アラートの自動通知(社員10名・小売業)

自動化前の状況

人気商品の在庫が少なくなると欠品が発生していた。在庫確認を担当者が1日2回手動でシステムを確認していたが、確認の合間に欠品になることがあった。

自動化後の仕組み(Zapier)

在庫管理システムと連携し、特定商品の在庫数が設定した閾値(発注点)を下回ると自動で:

1. 担当者のSlackに「〇〇の在庫が△△個になりました。発注をご確認ください」という通知が届く

2. Googleスプレッドシートの発注リストに自動追加される

効果:欠品件数が月5〜6件→0件に。担当者の手動確認作業が1日2回→必要な時だけに削減。

Zapier・Makeを始めるための3ステップ

ステップ1:「繰り返し業務リスト」を作る

まず、自分やチームが毎日・毎週繰り返している作業をリストアップします。「手順が決まっている」「複数のツール間での情報の転記がある」「通知・連絡を手動で行っている」という作業が自動化の候補です。

ステップ2:無料プランで試してみる

ZapierもMakeも無料プランで始められます。まず「フォームに入力があったらSlackに通知」という最も簡単な自動化から試してみましょう。1〜2時間で動くものを作れた体験が、次のアイデアへの意欲につながります。

ステップ3:自動化の「テンプレート」を活用する

ZapierもMakeも、よく使われる自動化のテンプレートが数千種類用意されています。「自分で設計するよりテンプレートを改造する」方がはるかに早く、品質も高いです。「フォーム→スプレッドシート」「メール→Slack」「CRM→会計ソフト」といった組み合わせはテンプレートで簡単に実装できます。

よくある質問

Q. ITが苦手な社員でも使えますか?

A. Zapierは「ITが得意ではない人」向けに設計されており、プルダウンで選択するだけで設定できます。YouTubeには日本語の解説動画も多数あります。Make(Makuro)は少し難易度が上がりますが、視覚的なフロー設計なので学習しやすいです。

Q. 自動化したものが途中で止まったときどうすればいいですか?

A. 自動化が失敗したとき、ZapierもMakeもメールまたはSlackで「エラー通知」を送ってくれます。エラーの原因の多くは「連携しているサービスのAPIキーの期限切れ」「シートのフォーマット変更」など、シンプルな理由です。月1回の動作確認の習慣をつけることで、大きな問題になる前に気づけます。

 

Zapier・Makeを活用した自動化で得られる主な効果:

  • 繰り返し作業の工数削減(平均60〜80%)
  • ヒューマンエラーの削減
  • スタッフが「付加価値の高い仕事」に集中できる時間の創出
  • 夜間・休日でも自動で処理が動く「働かない仕事」の実現

まず「フォームに入力があったらSlackに通知」という最小の自動化から試してみてください。その体験が、「次はあれを自動化できるかも」というアイデアの連鎖を生みます。

業務自動化の「費用対効果」を計算する方法

自動化ツールへの投資を経営者や上司に説明するとき、費用対効果(ROI)の計算が重要です。

ROI計算の基本式

ROI(%) = (削減工数コスト – ツール費用) ÷ ツール費用 × 100

計算例

削減工数:月20時間(平均時給3,000円として、月6万円相当)

ツール費用:月3,000円(Zapierプロフェッショナルプラン)

ROI = (60,000 – 3,000) ÷ 3,000 × 100 = 1,900%

「月3,000円のツール費用で、6万円分の工数を削減できる」という説得力のある数字が作れます。

ZapierとMakeの「落とし穴」と回避法

落とし穴1:自動化が壊れても気づかない

設定した自動化は、連携しているサービスのアップデートや仕様変更で突然止まることがあります。ZapierもMakeもエラー通知機能がありますが、通知先のメールを確認していないと気づけません。

回避法:重要な自動化には「ヘルスチェック用のテストZap/シナリオ」を設定し、毎日決まった時間に「動いているか確認できるSlack通知」を受け取る仕組みを作る。

落とし穴2:無料プランの制限を超える

ZapierやMakeの無料プランには処理件数の制限があります。業務量が増えると制限を超え、自動化が止まることがあります。

回避法:自動化開始前に1ヶ月の処理件数を見積もり、必要なプランを選ぶ。または、処理件数が制限に近づいたときに通知が来る設定にする。

落とし穴3:連携するサービスの認証が切れる

サービスのパスワード変更・セキュリティ設定変更などで、ZapierやMakeとの連携認証が切れることがあります。

回避法:月1回の「連携チェック」をカレンダーに登録し、主要な自動化の動作を確認する習慣をつける。

自動化の「優先度マトリクス」——どの業務から自動化すべきか

業務の種類 自動化の容易さ 効果の大きさ 優先度
定型フォーム→スプレッドシート転記 最優先
メール自動返信・通知 優先
レポートの定期生成 優先
複数システム間のデータ同期 優先
AIを使った文章処理・分類 次のステップ
条件分岐が複雑な承認フロー 段階的に

まず「自動化が容易で効果が大きい」業務から着手することで、早期に成果を出し、組織の自動化への信頼を高めることができます。

Zapier・Makeを社内に普及させるための「デモ戦略」

自動化ツールを社内に広めるとき、「デモ(実演)」が最も効果的なコミュニケーション手法です。

デモの進め方

1. 「社員が毎日困っている業務」を1つ選ぶ(例:Formsの回答をスプレッドシートに転記する作業)

2. その自動化をZapierで作り、10分の社内デモを行う

3. 「これまで1日30分かかっていた作業が、今日から自動でできます」と実演する

4. 感想・反応を記録し、次の自動化候補を選ぶ

デモを見た社員から「うちの部門でもこれやりたい」という声が必ず出てきます。それが組織全体への自動化文化の広がりのきっかけになります。

まとめ:自動化は「人の仕事を奪う」のではなく「人の仕事を変える」

Zapier・Makeによる業務自動化が広まるにつれ、「AIや自動化によって仕事がなくなる」という不安の声があります。しかし中小企業での実際の導入事例を見ると、自動化で工数が削減されたスタッフは、より創造的・戦略的な仕事に時間を使えるようになっています。

「繰り返し作業を自動化する」ことは、「人間が本来得意とすること(創造・判断・コミュニケーション)」に集中できる環境を作ることです。Zapier・Makeは、そのための道具です。まず一つの繰り返し作業を自動化することで、その感覚を体験してみてください。